短角亜目 Brachycera
伝統的分類では、大きく分けて直縫短角群 Orthorrhapha (いわゆるアブ)と、環縫短角群 Muscomorpha (いわゆるハエ)に分けられます。
しかし和名にハエとついていても直縫短角群に分けられる種や、逆にアブとついていても環縫短角群に所属するものもあり、外見的にも区別は明確ではありません。そこでこのページでは、分類群を絞り込みやすいように、ハエ、アブというくくりを区別せずに扱います。
なおこのページでは、検索や説明を簡略化するため、科の一般的な特徴を挙げて同定の指標としています。そのため、例外的な形態を持つ種などはうまく絞り込めない可能性があります。予めご了承ください。
| 特徴 I |
・翅のR4、R5脈は翅上部に終わる。
・翅脈に翅室 (d) がある。
・体色は黄色と黒、あるいは金緑色、暗紫色など鮮やかな種が多い。
→ミズアブ科（Stratiomyidae）の可能性が高いです。
ハチやハナアブに似た体色のものから、アメリカミズアブやコウカアブなど地味な色合いのものまで様々ですが、それに加えて翅脈の中心に翅室 （d, dm）があれば本科になります。
なおオドリバエ科（Empididae）にも翅室を持つものがありますが、こちらはR脈が翅の先端まで来ることや、口器の形状などで区別できます。
特徴Iに当てはまらない→特徴IIへ
| 特徴 II |
・翅のR4、R5脈が翅先端部で広がる（黒矢印）。
・触角第3節は数節に分かれる。
・下小盾板（赤矢印）が発達する。
→アブ科（Tabanidae）の可能性が高いです。
吸血性の種を含む群で、目につく機会も多い分類群です。湿地や水辺、畜舎の周囲などに普通に生息。種を決定する際にはメスの特徴を見ることが多いです。
なお、より大型になる山地性のタマユラアブ科（Pelecorhynchidae）も特徴が似ていますが、日本では極めて稀なので、見かけることがあればぜひ観察・採集に挑戦してみてください。
特徴IIに当てはまらない→特徴IIIへ
| 特徴 III |
・頭部が小型で、胸部の半分ほどの大きさ。
・胸部背面は大きく盛り上がる。
・複眼は♂♀どちらでも互いに接する。
→コガシラアブ科（Acroceridae）の可能性が高いです。
頭が小さい特徴的な形態をしています。世界で約500種が記録されていますが、そのほとんどの種で、幼虫がクモの体内に寄生して生活することが知られています。
なおセダカバエ科（Hybotidae, オドリバエ科に含むこともある）の種でも胸部が盛り上がりますが、こちらは翅脈などが全く異なり、またコガシラアブよりずんぐりしていないのが普通です。
特徴IIIに当てはまらない→特徴IVへ
| 特徴 IV |
・哺乳類や鳥類、コウモリなどの体に寄生している。
・体は基本的に扁平。
・翅をもたないこともある。
→シラミバエ科（Hippoboscidae）、クモバエ科（Nycteribiidae）、コウモリバエ科（Streblidae）です。
シラミバエ科は哺乳類や鳥類などの体表に寄生して生活している種で、翅はあります。クモバエ科、コウモリバエ科はコウモリに寄生して吸血する種で、どちらも頭部は小さく、クモバエ科は翅をもちません。
寄主から離れて行動することがほとんどないため、狙って採集しないとほとんど採れない種ですが、山林を歩いた後に体にくっついているということが稀にあるようです。
特徴IVに当てはまらない→特徴Vへ
| 特徴 V |
・ミツバチの体に寄生しており、シラミのような外見。
・腹部は大きく、胸部は狭まる（右写真）。
・翅をもたない。
→ミツバチシラミバエ科（Braulidae）です。
約10種弱がおり、その中でも特にミツバチシラミバエ Braula coeca が世界中から知られています。日本でもかつては見られていたようですが、正確な分布記録はありません。
特徴Vに当てはまらない→特徴VIへ
以下準備中
Under costruction...
残りの科
- アシナガバエ科 Dolichopodidae
- アタマアブ科 Pipunculidae
- アブラコバエ科 Chamaemyiidae
- イエバエ科 Muscidae
- オドリバエ科 Empididae
- オドリバエモドキ科 Hilarimorphidae
- キアブ科 Xylophagidae
- キアブモドキ科 Xylomyidae
- キモグリバエ科 Chloropidae
- クサアブ科 Coenomyiidae
- クシツノアブ科 Rachiceridae
- クチキバエ科 Clusiidae
- クロツヤバエ科 Lonchaeidae
- クロバエ科 Calliphoridae
- ケシショウジョウバエ科 Periscelididae
- ケブカハマバエ科 Helcomyzidae
- シギアブ科 Rhagionidae
- シダコバエ科 Teratomyzidae
- シマバエ科 Lauxaniidae
- シュモクバエ科 Diopsidae
- ショウジョウバエ科 Drosophilidae
- シロガネコバエ科 Milichiidae
- タマユラアブ科 Pelecorhynchidae
- チーズバエ科 Piophilidae
- チスイコバエ科 Carnidae
- ツヤホソバエ科 Sepsidae
- ツリアブモドキ科 Nemestrinidae
- ツリアブ科 Bombyliidae
- ツルギアブ科 Therevidae
- デガシラバエ科 Pyrgotidae
- トゲアシモグリバエ科 Odiniidae
- トゲハネバエ科 Heleomyzidae
- ナガショウジョウバエ科 Aulacigastridae
- ナガズヤセバエ科 Neriidae
- ナガレアブ科 Athericidae
- ニクバエ科 Sarcophagidae
- ニセヒメホソバエ科 Xenasteiidae
- ニセヒラタアシバエ科 Opetiidae
- ニセミギワバエ科 Canacidae
- ニセミバエ科 Pallopteridae
- ノミバエ科 Phoridae
- ハナアブ科 Syrphidae
- ハナバエ科 Anthomyiidae
- ハナホソバエ科 Anthomyzidae
- ハネオレバエ科 Psilidae
- ハネオレホソバエ科 Strongylophthalmyidae
- ハネフリバエ科 Otitidae
- ハマベバエ科 Coelopidae
- ハマベホソバエ科 Tethinidae
- ハモグリバエ科 Agromyzidae
- ハヤトビバエ科 → フンコバエ科
- ヒゲナガショウジョウバエ科 Champichoetidae
- ヒゲブトコバエ科 Cryptochetidae
- ヒツジバエ科 Oestridae
- ヒフバエ科 Hypodermatidae
- ヒメイエバエ科 Fanniidae
- ヒメコバエ科 Opomyzidae
- ヒメホソバエ科 Asteiidae
- ヒラタアシバエ科 Platypezidae
- ヒロクチバエ科 Platystomatidae
- フンコバエ科 Sphaeroceridae
- フンバエ科 Scathophagidae
- ベッコウバエ科 Dryomyzidae
- ホソショウジョウバエ科 Diastatidae
- マドアブ科 Scenopinidae
- マルズヤセバエ科 Micropezidae
- ミギワバエ科 Ephydridae
- ミバエ科 Tephritidae
- ムシヒキアブモドキ科 Mydidae
- ムシヒキアブ科 Asilidae
- メバエ科 Conopidae
- モモブトホソバエ科 Megamerinidae
- ヤクノバエ科 Borboropsidae
- ヤチバエ科 Sciomyzidae
- ヤドリバエ科 Tachinidae
- ヤリバエ科 Lonchopteridae
- ヨロイバエ科 Celyphidae
- ワラジムシヤドリバエ科 Rhinophoridae
- (和名なし) Acartophthalmidae
・使用画像
・Sargus maculatus male by Martin Hauser CC-BY-SA 3.0
http://www.biolib.cz/en/image/id40959/
・Stratiomyidae wing veins-1 by Giancarlo Dessì CC-BY-SA 3.0
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Stratiomyidae_wing_veins-1.svg
・ Ornithomya-avicularia-lausfliege by H. Krisp CC-BY 3.0
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ornithomya-avicularia-lausfliege.jpg