日本昆虫目録におけるアシナガバエ科

Dolichopodidae in the Catalogue of the insects of Japan

2014年9月に出版された日本昆虫目録では、23属96種のアシナガバエ科がリストアップされています。

その中では、これまでの既知種は広く取り上げられていますが、主に日本語文献で記録された種が省かれています。また当サイトでは、より広く情報を収集するため、標本情報が明確に示されていない記録も集めており、若干種数が異なっています。

 

以下、日本昆虫目録と、当サイトで独自に集めている日本産アシナガバエ科の記録との違いを挙げていきます。


Following dolichopodid species are recorded in Japan, which are not listed in the Catalogue of the insects of Japan (published in 2014). 

Some of the following species contain doubtful or uncertain records (ex. no information of specimen were provided).


*Chrysotus chinensis Wiedemann, 1830

  松村 (1900)で、ヒメキンバイ(ヒメキンバエ)の名で取り上げられています。しかし証拠標本情報は不明で、かつ本種はその正体がよくわかっていないため、疑問が残る記録。 

 

*Dolichopus gubernator Mik, 1878 

 和田ほか(2007; 寄せ蛾記 127, 15-37)で初めて日本から記録され、田悟 (2010)で、ヒラアシナミアシナガバエの和名が与えられた。

 

*Hercostomus aerosus (Fallén, 1823)

 日本昆虫目録ではGymnopternus属として記録。この2属は相互に類似する点が多いため、どちらの属に入れるか議論がある種も多くいる。

 

*Hercostomus lii Yang, 1999

 田悟(2012)でトゲナガクチヒゲアシナガバエとして記録。

 

*Phalacrosoma zhenzhuristi (Smirnov et Negrobov, 1979)

 日本昆虫目録ではHercostomus属として記録。Zhang et al. (2009)で属の変更を提唱されたばかりで、まだ広い合意を得ていない可能性もある。

 

*Sybistroma neixianganus (Yang, 1999) 

 田悟 (2012)で初記録、カメントガリアシナガバエの和名が与えられている。Sybistroma属は触角が非常に独特な形状をしており、この種も大型の黄色い触角を持っているのが特徴。


*Hydrophorus praecox (Lehmann, 1822)

 Takagi (1967)で、具体的な標本情報は示されていないものの、北海道や四国で採集されているとの記述がある。


*Medetera infumata Loew, 1857

 佐藤(1997)で初記録。ただし図などは示されていない。


*Thrypticus smaragdinus Gerstäcker, 1864 

 フサゲコシブトアシナガバエの和名で、田悟(2010)で初記録。捕食性の種が多いアシナガバエ科の中では、例外的に幼虫が植物を利用する。


*Rhaphium micans (Meigen, 1824)

 田悟(2010)で、コブアシオオヒゲアシナガバエの和名で記録。ただし、和名に入れ違いがあり、「はなあぶ」38号でウデグロオオヒゲアシナガバエに訂正された。

 

*Sciapus nervosus (Lehmann 1822)

 田悟(2010)で、カワラホソアシナガバエの和名で記録。県単位の昆虫目録でも散発的に記録されている。

 

*Sympycnus turbidus Becker, 1922

  Evenhuis and Bickel (2012) で、未発表データとしながらも日本からの生息を記録。


*Hercostomoides indonesianus (Hollis, 1964)

 田悟(2010)で、ヘラヒゲアシナガバエの和名でGen sp.4tとして記録され、田悟(2012)で種名が確定。



※2014年以降に記載、記録された種については、ここでは取り上げていません。日本産アシナガバエ科チェックリストを参照してください。