アシナガバエ科 Dolichopodidae

マダラホソアシナガバエ Condylostylus nebulosus (Dolichopodidae, Sciapodinae)
マダラホソアシナガバエ Condylostylus nebulosus (Dolichopodidae, Sciapodinae)

 

アシナガバエ科(DOLICHOPODIDAE)は、世界に約7000種を擁する、双翅目の中でも大きなグループ。日本ではこれまでに約100種が記録されているが、未記録種を含めると約500種は生息していると推測されている(桝永 2005)。

 

幼虫が水生生活をする種が多く、湿地や渓流沿い、海岸などに多くの種が生息する。しかし樹幹や植物の茎を利用する種などもある。特にホソアシナガバエ亜科(Sciapodinae)に属する種は水辺や湿地以外で見られることも多い。

 

和名の通り脚が細長く、非常に俊敏な動きを見せる。食性は殆どの種で肉食で、トビムシなどの微小昆虫や他の双翅目昆虫を餌として利用する。

 

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アシナガバエ科の特徴 Characteristics of Dolichopodidae

アシナガキンバエ Dolichopus nitidus ♂
アシナガキンバエ Dolichopus nitidus ♂

以下は主にYang et al. (2006) による。

 

・体色は多くが金緑色。ただし黄色、黒色、銀色などの種もいる。

・通常脚は非常に細長い。

・翅脈のC脈はh脈の近くにある。

・r-m脈が基部に近いところにある。

・M1+2脈は時として途中で曲がる(右写真)

・cua室は小型。

・雄交尾器はふつう大型で、前方に向いている。

 

Dolichopus sp. ♂
Dolichopus sp. ♂

翅脈が比較的単純であるため、慣れれば翅脈で大まかに判別できる。ただしショウジョウバエ科やミギワバエ科など、翅脈が比較的似るグループもある。アシナガバエ科の額には、額線と半月板という構造がないため、ショウジョウバエなどとは区別できる(右写真。触角の上部に溝のような構造がない)。また、触角が羽毛状にならないことでもこれらの科と見分けられる。

 

翅脈。アシナガバエ科(左上)、アシナガバエ科ホソアシナガバエ亜科(左下)、ミギワバエ科(右上)、ショウジョウバエ科(右下)
翅脈。アシナガバエ科(左上)、アシナガバエ科ホソアシナガバエ亜科(左下)、ミギワバエ科(右上)、ショウジョウバエ科(右下)

参考文献

 

桝永一宏(2005)アシナガバエ科 1221- 1228. In. 川合禎次、谷田一三(共編)『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』(2005年、東海大学出版会)

 

Yang, D., Zhu, Y., Wang, M., Zhang, L. (2006) World catalog of Dolichopodidae (Insecta: Diptera). China Agricultural University Press.

 


ギャラリー (Flickrより)

DOLICHOPODIDAE Long-leged fly
DOLICHOPODIDAE Long-leged fly
Poecilobothrus nobilitatus (Dolichopodidae) ♂, Parc de Woluwe, Bruxelles
Stylidium miniatum with Austrosciapus sp fly
Dolichopus or Hercostomus sp. (Dolichopodidae), Lichtenbach bei Rocherath, Ostbelgien
Syntormon sulcipes, Minera, North Wales, July 2023
Medetera sp. (Dolichopodidae), Parc de Woluwe, Bruxelles
Argyra thoracica
9b - Heteropsilopus ingenuus (Erichson, 1842)
9a - Heteropsilopus ingenuus (Erichson, 1842)
8b - Heteropsilopus ingenuus (Erichson, 1842)
8a - Heteropsilopus ingenuus (Erichson, 1842)
Sciapus platypterus - Scarborough
Poecilobothrus nobilitatus - female - Hanson Environmental Study Centre