双翅目ニュース アーカイブ

Diptera News - Archives

2014.10.21

 

2014年9月1日に、日本昆虫目録編集委員会(編)『日本昆虫目録第8巻 双翅目』(櫂歌書房)が刊行されました。

2冊組で、第1部が長角亜目-短角亜目無額嚢節、第2部が短角亜目額嚢節です。

収録数は2冊で124科1668属7658種(sp.含む)です。

和名及びシノニム、原公表の文献、タイプ産地、地理的分布、備考が列記されています。

出版元の櫂歌書房(http://www.touka.com/)か、六本脚(http://kawamo.co.jp/roppon-ashi/)から注文することができます。

 

The catalogues of the Diptera of Japan were released on September, 2014

 

*Nakamura T., Saigusa, T. and Suwa, M. (eds) 2014. Catalogue of the Insects of Japan Vol.8 Diptera. Part 1: Nematocera-Brachycera Ashiza. Touka shobo, Fukuoka. i-xxxii + 539pp

*Nakamura T., Saigusa, T. and Suwa, M. (eds) 2014. Catalogue of the Insects of Japan Vol.8 Diptera. Part 2: Brachycera SchizophoraTouka shobo, Fukuoka. i-xiv + 562pp

 

124 families, 1668 genus and 7658 species are listed on these catalogues.

 


 

2014.5.1

 

国立環境研究所(NIES)が、ユスリカ科昆虫についてのDNAデータベースを公開しました。2014年3月現在、43種267件のデータが登録されています。

データベースには、DNA配列のほか、成虫、幼虫の標本写真もあるため、同定の参考になるものと思います。

 

ユスリカ標本DNAデータベースの公開について (プレスリリース)

ユスリカ標本DNAデータベース

 

DNAによる種同定、いわゆるDNAバーコーディングに使用できる

データベース(DB)です。ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子の配列を比較することで、形態では同定が難しかったメスや幼虫でも種の同定を簡便にすることが狙いです。

本DBのDNAは、液浸標本をタンパク質分解酵素で処理する手法で抽出しており、同様の方法で標本を壊さずに同定することも可能になるものと思われます。また川の水等に含まれる生物断片から、ユスリカ科昆虫のDNAを抽出し、種同定に応用できることも期待されます(環境DNAの利用)。

 

今後普通種を中心に100種程度のデータを登録するとのことですが、日本産種は1500種以上いるので、このDBでヒットしない種もまだ多数あり、普通種以外であればなかなか難しいかもしれません。とはいえ、アセスメントなどで多数得られる割に同定が困難な現状を考えれば、一定の利用価値はあるかと思います。

 

昨今PCR(遺伝子の増幅装置)やシーケンサー(DNA配列の解読を行う装置)が低価格化し、個人で自作できるものも登場しているため、今後このようなDBがさらに作成・利用されていくものと思われます。しかしDBの作成を担える専門家(分類学者)がいない分類群ではそもそもバーコーディングに必要なDBが作成ない、種内変異の多い種ではバーコーディングによる同定が困難である、といった限界を踏まえたうえで、必要に応じて活用が進むことを期待します。


2013.7.9

 

Fan et al. 2013. Genetic and Neural Mechanisms that Inhibit Drosophila from Mating with Other Species Cell  154(1), 89-102

 

ショウジョウバエ属(ショウジョウバエ科)の雄は、前脚にある化学物質受容タンパク質(Gr32a)によって、相手が同種かどうかを判断し、異種間交配を抑制していることを示した論文が発表された。

 

ざっくりというと、キイロショウジョウバエのオスは、前脚で相手のメスに触れ、それが同種であればGr32a受容体が反応し、交配行動を引き起こす神経細胞FruMが働くため、性行動を起こす。しかし形態がよく似た別種に触れても、Gr32aが反応しないために交配に至らない、ということを示したのがこの論文。

 

生殖隔離に関する重要な知見であるが、分子系統学などに応用出来る可能性もある結果と考えられる。特に双翅目のオスはメスに比べて、前脚が種間で多様な形態を示すことがあり、属種を分ける重要な分類形質とされることもあるが、それと合わせて各種が持つGr32aの違いが、種を区別するための鍵となるとも考えられる。


2012.7.2

世界最小の双翅目(ノミバエ科)(→ニュース元

 

世界最小の双翅目がタイで発見され、新種として記載された。そのハエはノミバエ科の Euryplatea nanaknihali (Brown, 2012) で、体長は0.4mm、ヒアリ(ファイアーアント)に寄生しているところを発見された。

 

記載論文:Brown, B.V. 2012: Small size no protection for acrobat ants: world's smallest fly is a parasitic phorid (Diptera: Phoridae). Annals of the Entomological Society of America, 105(4): 550-554.

 

画像:Image by Brian V. Brown CC-BY-SA 3.0

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:World's_smallest_fly.jpg